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<内容紹介>
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
<第十四回 つかの間の安らぎ>
杜甫一家は蜀の成都に到着して、ようやく安定した暮らしができるようになりました。今回は上元2年(761)、杜甫50歳の春から夏にかけて作られた名作を見ます。
七言律詩「狂夫」は周囲の状況を見つめながら、自分の世わたりのまずさ、生活力のなさを嘆いたもの。同じく「江村」は、夏の或る日、周囲の情景と家族たちのようすを描き、"今のおだやかな暮らしこそ、なにものにも代えがたい"と感概深く結んでいます。七言律詩「客 至る」は、県の長官の来訪を歓迎して作った、長官に気さくに語りかけるような作。五言律詩「春夜 雨を喜ぶ」は、降りつづく春の雨が萬物をはぐくむはたらきに感謝の思いをささげる作。
今回の詩のテーマは、自分への問いかけ、家族へのまなざし、客人への語りかけ、自然のめぐみへの感謝、と多様なものになっています。
<収録作品>
狂夫(きょうふ) 七言律詩
江村(こうそん) 七言律詩
客至(客 至る) 七言律詩
春夜喜雨(春夜 雨を喜ぶ) 五言律詩
<宇野直人(うの・なおと)>
昭和二十九年、東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、文学博士。現在、共立女子大学国際学部教授。著書に『中国古典詩歌の手法と言語』(研文出版)『漢詩の歴史』(東方出版)『漢詩の事典』(共著、大修館書店)など。平成十九年、NHKラジオ「古典講読――漢詩」講師、平成二十年より同「漢詩をよむ」講師。