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漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地が幻想的でもあり、夢のようでもある「ファンタスティック」な漢詩。
時代背景や作者の境遇を交えた色彩豊かな漢詩の魅力に溢れる講義です。
漢詩は和歌や俳句とともに、永く日本人に親しまれて来た文学形式ですが、漢字ばかりで作られるため、気おくれしてしまう人もおられるようです。
が、そのいかめしい外見から一歩中に入ってみると、まことに多彩で魅力ある世界が現れて来ます。
それは或る種の果物に似ています。西瓜(スイカ)の、あの固い緑色の外皮の中には赤くジューシーな果肉が、また荔枝(ライチ)の、あの固いトゲだらけの、茶色の外皮の中には、丸くて白く、甘い果肉が包まれています。
このシリーズは、漢詩のそのような果実をなるべくわかりやすくお伝えするもので、名作の数々を、時代背景や作者の境遇と合わせてお話ししてゆきます。
漢字一つ一つが持つ個性的な形と意味、それらの組み合わせからさまざまにひろがってゆく境地は、まさしくファンタステイック!と言えるでしょう。
〈第二回 郷里を出る〉
25歳になった李白は故郷の蜀(しょく)(四川省)を出、社会勉強と就職活動を兼ねて、諸国漫遊の旅を始めます。各地の政治の実態を目の当たりにして見識を磨くとともに、名士たちに積極的に面会して自分の能力を認めてもらうことは、知識階層に属する若者たちがたどるべき必須の課程でした。
彼がまず向かったのは、江南の名所――金陵、揚州(江蘇省)、会稽(かいけい)(浙江省)でした。この辺りは物産も豊富ですし、南朝以来、水運を活用した商行為が繁栄していたのです。
今回は、蜀を出た直後の七言絶句「峨眉山月(がびさんげつ)の歌」「早(つと)に白帝城を発す」に始まり、江南に着いた直後、なじみの妓女に贈った七言古詩「金陵子に示す」を取り上げます。妓女は歌や踊り、楽器の演奏でお客をもてなす一種の芸能人ですが、詩文や弁舌に巧みな人も多く、当時の文化の一翼を担う重要な人々でした。
● 収録作品
「峨眉山月(がびさんげつ)の歌」
「早(つと)に白帝城を発す」
「金陵子に示す」