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山本周五郎は「文学には"純"も"不純"もなく、"大衆"も"少数"もない。ただ"よい小説"と"わるい小説"があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。
<あらすじ>
慶応四年(明治元年)桑首に住む戸部丈右衛門は、庄内藩の兵の侵入に備えて、女と子供たちを逃がそうとしていた。そのために、娘たねの出産の付き添いで半道寺にいる老母きよえの元にも、桑首にしばらく帰って来ずに半道寺にとどまるよう手紙をやったが、翌日に帰って来た返事を見て困った顔になった。これから帰るため、日暮れには着くとのことだった。丈右衛門はおそらく母は手紙を読んでないのだと思い、妻のりうに言って七郎次を使いに走らせた。
ところがその日の暮れ、きよえは七郎次が供をして桑首に帰って来た。丈右衛門は手紙が届かなかったのかと問うが、きよえはその手紙なら読んだという。庄内軍もすぐそこまで迫っていると言っても、きよえは動じる様子はなかった。
どうにか母や妻、子供たちを安全なところに逃がしたいと思う丈右衛門であったが......
山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)
1903~67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。