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<あらすじ>
加川銕太郎は困惑していた。それは妻のゆきをの不可解な願いのためである。
「仔細は申し上げられません、どうぞなにもお訊きにならないで下さい」
「このお願いを聞いて下さらなければ、私は自害するほかはありませんし、
加川の御家名にも瑕がつくのです」
その願いとは岡野弥三郎との決闘であった。
理由のわからない決闘に気が進まないが、過去の岡野とのやり取りには引っ掛かりがあった。
ゆきを結婚して四年目の秋、岡野と口論したことがあった。岡野が銕太郎にいい側女を探そうかと言ったのだ。銕太郎とゆきをとの間には跡取りが授かれずにいた。
「加川夫人には昔から薊の花という仇名があったそうです」
薊の花には実が生らない――それをゆきをに対する愚弄と受け取った銕太郎は激高する......。
だが、「薊のとげで自分の妹は傷付いたし、ほかにも傷ついた娘がかなりいる」という言葉は、鉄太郎の心に影を落としていた。
どうしても妻の真意がわからないまま、このままではゆきをが自害してしまうと危惧した銕太郎は遂に岡野に対して決闘を申し込むのだが......。
山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)
1903~67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。