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山本周五郎は「文学には"純"も"不純"もなく、"大衆"も"少数"もない。ただ"よい小説"と"わるい小説"があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。
<あらすじ>
文政六年、水戸領平磯の沖へ見慣れぬ異国船が現れた。それからも隙あらば沿岸へ近づき、陸地のようすを探って回るので、常陸の海岸一帯には色々な噂が広まり、今にも異国人が放火を射かけて攻め寄せるだろうと戦々恐々としていた。
多賀郡の大津の浦の郷士の娘きぬは、この様を見てじっとしておれず、裁縫稽古所へ集まる娘たち三十人ばかりを誘って、竹槍の稽古を始めていた。
だが、そんな中、一人どうしても一緒に稽古をしようとしない貞子が許せず、もう稽古に来ないよう言い放った。
貞子は一年ほど前にこの土地に移ってきた一家の者であった。貞子の家には病床の母と幼い弟がおり、父は水戸家に仕える武士であったが不興を買って追放された後に切腹したため、貞子が暮らしを支えていた。どうにか仕立ての仕事で暮らしを成り立たせていた。
五月二十八日の昼頃、大津の沖に突然二艘の異国船が現れ、町が騒然とする中、きぬが貞子の家を訪れる......。
山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)
1903~67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。