夢殿

audiobook (Unabridged)

By 楠山 正雄

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むかし日本の国に、はじめて仏さまのお教えが、

外国から伝わって来た時分のお話でございます。

お妃の穴太部の真人の皇女という方が、ある晩、

ご覧になったお夢の中で、体じゅうからきらきら

金色の光を放って、なんともいえない貴い様子をした

坊さんが現れて、お妃に向かってこう言ったのでした。

「わたしは人間の苦しみを救って、この世の中を

善くしてやりたいと思って、はるばる西の方から

やって来た者です。しばらくの間、あなたの

お腹を借りたいと思います」

と、そこでお夢はさめました。

やがてお身重におなりになりました。

さて翌年の正月元日の朝、お妃はにわかにお産気がついて、

そこで美しい男の御子をお生みおとしになりました。御殿の中は急に

金色の光でかっと明るくなりました。そして皇子のお体からは、

それはそれはなんとも不思議なかんばしい香りがぷんぷん立ちました。

のちに皇太子になり、聖徳太子と申し上げるのは

この皇子のことでございます。

※ 本作品は発表時の時代背景により、今日の社会では一般的でなく、

不適切と思われる表現が含まれている箇所がございます。しかし作品の

オリジナル性を最大限に尊重し、当時のまま忠実に再現することを優先いたしました。

■楠山正雄(くすやま・まさお)

東京銀座生まれ(1884~1950)。早稲田大学時代に坪内逍遙や島村抱月に師事。

大学卒業後の1907(明治40)年、早稲田文学社に入り編集者としてのキャリアを始める。

しばらく編集者と演劇人の二足のわらじを履いていたが、1915(大正4)年、

冨山房社長の命を受け、「模範家庭文庫」の担当となる。親交のあった岡本帰一に

ヴィジュアル面を託し、他人の原稿を編集するうち、児童文芸への意識が高まっていく。

やがて自らも文庫の執筆に手を出し、また児童向けの創作や翻訳も意欲的に行う。

夢殿