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山本周五郎は「文学には"純"も"不純"もなく、"大衆"も"少数"もない。ただ"よい小説"と"わるい小説"があるばかりだ」を信念とし、普遍妥当性をもつ人間像の造形を生涯の目的とした作家で、時代小説を中心に沢山の作品を残しています。
その作風は今なお古臭さを感じさせず、繊細に描かれた人の心の機微や人情に、思わず笑わされたり、胸を打たれたりする魅力に溢れています。
<あらすじ>
天保五年正月の正月。薬種屋「むさし屋」の寮が自火で焼け、焼け跡から三人の死体が見つかった。その身元は下女のおまさが言うには主人の喜兵衛とおかみのおその、そしてその娘のおしのであった。おまさは、喜兵衛とおしのに同情を寄せる一方で、おそのに対しては、
「おかみさんがあんな死に方をなさったのは天罰だと思います」
と冷ややかな調子で言った。
――喜兵衛の病状が悪化したのは十二月末の夜のことだった。先が長くないと医者に言われておしのは、喜兵衛の労咳がうつるのを離れ住む母のおそのに来て欲しいと頼んだが、ついにおそのが来ることは無かった。
喜兵衛が危篤に陥った時、彼は最期におそのに一言言ってやりたいことがあると、おそのが住む寮へ行こうとするが、結局その一言を伝えきるまでに息絶えてしまった。
悲しみに暮れるおしのに追い打ちを掛けるように、おそのは衝撃的な事実を伝えた。おしのの本当の父親は喜兵衛ではないのだというのである。
自身に流れているのは汚れた母の血だけ――それを悟ったおしのの心に復讐の炎が燃える......
山本周五郎(やまもと・しゅうごろ)
1903~67年。小説家。山梨の生まれ。本名・清水三十六(さとむ)。名は生まれ年からつけられ、筆名は東京で徒弟として住み込んだ質屋「山本周五郎商店」にちなんだ。20代前半に作家活動を始め、39歳の時『日本婦道記』が直木賞に推されたが受賞辞退。その後も多くの賞を固辞する。江戸の庶民を描いた人情ものから歴史長編まで作品は数多い。代表作には、「樅(もみ)ノ木は残った」「赤ひげ診療譚」「おさん」「青べか物語」「さぶ」などがある。1987年9月には、「山本周五郎賞」が新潮文芸振興会により設定された。