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「金の輪」は、1919年4月『労働文学』にて発表された作品。
輪をまわす遊びを「輪回し」と言いますが、
この「輪回し」という言葉には、国語辞典によると次の意味があります。
1) 竹や鉄で作った輪に先が二またに分かれた棒を当てて、
輪を倒さないように転がして進む遊び。
2) 連歌・俳諧の付合(つけあい)で、前々句へ句意が返るようにする付け方。
輪廻(りんね)。
未明は大正3年に長男を、大正7年に長女を失いました。
その1年後の大正8年に発表された「金の輪」は、その悲しみから
書かれたとも言われています。
まさに文学というべき詩的な文体と、未明らしい結末のむかえ方は、
読者の心をわしづかみにするほどの強烈な印象を残します。
あらすじ
長い間病気で臥していた太郎は、ようやく床から出られるようになりました。
日の出ている間だけ外に出ることができた太郎が外に出てみると、
どこにも友だちの姿がありませんでした。
ひとりしょんぼりとしていると、往来の上からひとりの少年が
ふたつの金の輪をまわしながら走ってきました。
美しく光る金の輪をまわす少年は、太郎に向かって微笑んで、
往来の向こうへ消えていきました。
次の日に太郎が同じ時刻に外に出てみると、再びその少年に出会いました。
そしてまた太郎に向かって微笑みかけて、消えていきました。
その晩、太郎は夢を見ました。
太郎は、その少年から金の輪をひとつ分けてもらって、
どこまでも走って行って、赤い夕やけの中にとけていきました。
小川未明(おがわ・みめい)
1882年4月7日-1961年5月11日
小説家・児童文学作家。本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。
在学中に処女作「漂浪児」を発表し、逍遥から「未明」の号を与えられ、
卒業直前に発表した「霰に霙」で小説家としての地位を築く。