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文豪鴎外による性的哲学小説
「人生のあらゆる出来事は皆性欲の発揮である」 「性欲の目金めがねを掛けて見れば、人間のあらゆる出来事の発動機は、一として性欲ならざるはなしである」
丁度好いから、一つおれの性欲の歴史を書いて見ようかしらん。実はおれもまだ自分の性欲が、どう萌芽ほうがしてどう発展したか、つくづく考えて見たことがない。一つ考えて書いて見ようかしらん。白い上に黒く、はっきり書いて見たら、自分が自分でわかるだろう。そうしたら或は自分の性欲的生活が normal だか anomalous だか分かるかも知れない。勿論書いて見ない内は、どんなものになるやら分らない。随したがって人に見せられるようなものになるやら、世に公にせられるようなものになるやら分らない。とにかく暇なときにぽつぽつ書いて見ようと、こんな風な事を思った。
明治42年発表の掲載雑誌「昴」が時の政府により発禁処分となった所以の小説。タイトルはラテン語で「性生活」を意味し、そのタイトルから想起されるセンセーショナルなイメージとは裏腹に、本書は「金井君」の6歳から21歳までの性の歴史を哲学的思想に基づいた自伝的小説の体を無している。
鴎外のシニカルな視点から記された人の性の萌芽、性欲の発育がいかにして起こったかを、覗き見ていただきたい。
著者 森 鷗外(もり おうがい)
1862年2月17日- 1922年7月9日)は、日本の明治・大正期の小説家、評論家、翻訳家、医学博士・文学博士。 石見国津和野(現・島根県津和野町)出身。東京大学医学部卒業。 大学卒業後、陸軍軍医になり、陸軍省派遣留学生としてドイツで4年過ごした。帰国後、訳詩編「於母影」、小説「舞姫」、翻訳「即興詩人」を発表する一方、同人たちと文芸雑誌『しがらみ草紙』を創刊して文筆活動に入った。その後、日清戦争出征や小倉転勤などにより、一時期創作活動から遠ざかったものの、『スバル』創刊後に「雁」などを発表。「阿部一族」「高瀬舟」など歴史小説や史伝「澁江抽斎」等も執筆。