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大和の吉野の地を旅して、その風物自然と、その地に伝わる歴史伝説を語る谷崎潤一郎の中期の随筆的な中編小説。
同行する友人津村の話も織り込まれ情緒深い物語となっている。
「私」は友人の津村の案内で、秋の大和国吉野を旅している。
後南朝時代の歴史小説を書くのに必要な題材を集めるためである。
史実を都合よく配列するだけでも、面白い読み物を作り得るであろうが、もしその上に口碑や伝説を取り交まぜたら、一層面白くなるであろう。
私はこれだけの材料が、なにゆえ今日まで稗史小説家の注意を惹ひかなかったかを不思議に思い、誰も手を染めないうちに、自分がぜひともその材料をこなしてみたいと思っていた。
津村は親戚が吉野に住んでいるため、私を案内してくれることになった。旅の途中、津村は自分の生い立ちのことなども話してくれた。
津村は幼い頃に亡くした母を知るために、以前にも母の生家のある吉野を訪れていた。そして津村は今回吉野に来るにあたって一つの目的があったのだった。