考えたことなかった

ebook

By 魚住直子

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ある日、ネコに声をかけられた。
「わたしは、未来のおまえなのにょー。」
このままだと、おれの将来、たいへんなことになるらしい。
いったい、どうして?
知らないうちにさせられてる競争。
「ふつう」は男子がおごるもの?
おばあちゃんがなんでもやってくれる祖父母の家の「居心地の良さ」。
どこかでつながりあった社会のしくみに気づいて
考えはじめる男の子の物語。
:::::::::::::::::::::::::::::
 なんでおれだけにさせるんだよ。なんでおじいちゃんはやらないんだ。おじいちゃんは男で、年上だから、やらなくていいのか。
 泡だらけの皿を洗いながら、イライラしてくる。
 なんにもしないおじいちゃんを横目に、おばあちゃんはこうやって、いつもひとりで家事をやっていたんだろうな。
 だけど、おばあちゃんがぜんぶやってくれるから、おれも居心地がよかったんだ。
 そう思うと複雑な気分になる。
 ふと、陽菜子の話を思いだした。
『おばあちゃんは、わたしにだけ手伝わせるんだよ。』
 でも、そうか。おばあちゃんは、陽菜子にはさせるんだ。
 ということは、どういうことだ?
 おばあちゃんは不公平に腹を立てているけど、陽菜子には不公平なことをするということか。
『どうしてわたしばかり家事をやらされるの? なんでおにいちゃんはしなくていいの?』
 以前、陽菜子がお母さんにそう訴えていたときも、そんなに怒ることかよ、と颯太は最初、うっとうしく感じただけだった。
 だけど、不公平をされるほうは、すごく腹が立つんだ。でも不公平をするほうや、不公平に関係ないと思っているほうはピンとこないんだ。
(本文より)
考えたことなかった